パンドラの本棚

雑食な本好きによるライトな読書録。

奇々怪界な高校生日記

キリハラキリコ 紺野キリフキ

なんか面白いのないかと近所の大垣書店をフラついていたら出会った作品。
1ページ目を立ち読んだら引き込まれ、早足に会計を済まし気付いたらベンチで読破してました…。

鋼の精神力を持つ少女

この小説は、主人公のキリハラキリコが書く日記体で進みます。
なんてことない高校生の日記なんですが、初っ端から始業式なのに誰もいない教室に迷い込むという不思議な体験をします。
しかし、この少女全くと言っていい程動じません。普通に家に帰ってますからね。
その後もシャワーから蕎麦が出たり、自宅が駅になったり、暦を管理する親子や病気を売る病気屋が自室に侵入してきたりとめくるめく不思議体験が押し寄せるのですが、特に驚く事なく淡々と感想を綴っています。
段々キリハラキリコの肝が座ってるのか、この世界ではごく普通の出来事なのかわからなくなってきます。

個性豊かな街の人々

主人公も中々変わってますが、街の住人達も負けてはいません。
★キリコの友人ロボ太郎(ロボット辞めたい)
★ヅラを見分ける能力だけ天才的なミスター水村(無職)
★カレンダーをめくりに来る暦屋(紳士&少女)
★魔法の効力が短い魔女(パート勤務)
等他にも一癖も二癖もある面々が登場します。

シュールなだけじゃない

ユーモア要素が強い作品ですが、
主人公のキリコが1年で成長していく過程もきちんと描かれています。
特に全体を通して展開する暦屋の娘とのエピソードや、工場にいってしまった同級生との会話は読んでいて切ない気分になります。
思いもよらないタイミングでホロリとさせてくるのが憎い演出です。

キリハラキリコ (小学館文庫)

キリハラキリコ (小学館文庫)